乳がんについて

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乳がんについて

 我が国における乳癌の罹患率は一貫して増加の傾向があります。女性における癌罹患のおよそ2割を占めております。
 乳癌がみつかるきっかけとしては、検診でのマンモグラフィ、乳房のしこり、エクボなど皮膚の変化、脇の下や首のリンパ節の腫れ、などがあります。このような場合には病院での精密検査が望ましいです。

乳癌の手術

 近年では、比較的初期の段階から,乳癌は全身病であるという考え方が主流です。そのため、乳癌の治療は手術でどれだけ広くがんを切除するかということよりも、手術後の薬物療法で目にみえない全身に残っている癌細胞を死滅させることが重要です。それぞれの患者さんの病状に合わせた手術を行なって、顕微鏡検査結果から微細な癌細胞が全身へ広がっている可能性を予測し、薬物療法(化学療法,ホルモン療法,分子標的治療)や局所治療(放射線療法)を行います。
 乳房温存療法(乳房温存手術+放射線療法)は、乳房切除術と同等の治療成績が得られることが示されており、温存手術施行割合は増加しています。
 また、当院では乳癌手術時と同時に再建する一次再建、また術後に再建する二次再建双方に対応しています。
 センチネルリンパ節とは乳房内から乳癌細胞が最初にたどりつくリンパ節です。このセンチネルリンパ節を手術中に摘出し、乳癌細胞があるかどうかを顕微鏡検査で調べます。センチネルリンパ節の摘出のみで済んだ場合、系統的な腋窩リンパ節郭清が省略でき、上肢のむくみや知覚の変化が少なくなります。当院でも、常勤の病理専門医の協力のもと、センチネルリンパ節生検を実施し、体に優しい治療を心がけています。
 乳癌の手術後にはだいたい10年にわたって、定期的な通院をしていただきます。

センチネルリンパ節生検について

従来、日本における乳癌の手術手技としては、乳癌取扱い規約に則り腋窩(脇の下)のリンパ節を郭清(周囲の脂肪も含めてリンパ節を一塊に取る)する術式が広くおこなわれていました。しかし、この手技を施された患者さんの中には、リンパ節の病理診断の結果、リンパ節への転移がなかったという結果が出る患者さんも少なくありません。また転移の有無に関わらず郭清を施行すると、上肢のむくみが約20%の人に、上腕のしびれ感が多くの人に、上肢の動きが悪くなる人も一部に見られます。そこで、術中センチネルリンパ節生検が、欧米にて乳癌を持つ患者さんの為に開発されました。この方法は、「センチネルリンパ節」と呼ばれる、腫瘍から真っ先に転移すると推定されるリンパ節を見つけ出し、まず摘出し病理診断を行なうものです。手術中、色素を乳房の皮下皮内に注射し、リンパ節が染色されることにより、センチネルリンパ節を同定します。
センチネルリンパ節に転移がなければ、それ以上の郭清は省略します。転移があれば、通常の腋窩郭清を行ないます。 センチネルリンパ節が同定できない場合には、従来通りのリンパ節の郭清をおこないます。術中病理診断で、転移がなしと診断され腋窩郭清が省略された患者さんの永久標本にて、センチネルリンパ節への転移が確認された場合、その結果を本人に説明し、①再手術(腋窩郭清の追加)、②腋窩に放射線照射、③経過観察を選択していただきます。郭清が省略された場合には、郭清による副作用はなくなりますが、ごくまれに残ったリンパ節に転移か出てくることがあります。その場合には、再手術により摘出する必要があります。また、状況によっては、抗癌剤や放射線を当てることもあり得ます。

乳癌手術と同時あるいは術後の乳房再建について

当院では乳癌手術時と同時に再建する一次再建、また術後に再建する二次再建双方に対応しています。

乳癌の薬物療法

 再発時の薬物療法として、内分泌療法(ホルモン療法)や化学療法(抗癌剤治療)を行います。病気の進行度や病気の性質(ホルモン感受性や増殖因子の発現など)を検査して、日本乳癌学会発行の『乳癌診療ガイドライン』に準じて適切な治療法を決定します。
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